CHAPTER 1 中国不動産市場の全体像 ── 「底打ち期待」を裏切った2025年の実態
1-1 マクロが示す厳しい現実

2025年の中国不動産市場は、「底打ち期待を裏切り、全指標が揃って悪化した1年」だった。北京日本商会『中国経済と日本企業2026年白書』(国家統計局データ)によると、投資・着工・販売・価格のすべてが前年比マイナスを記録し、下落幅は年末にかけてむしろ拡大した。

指 標2025年実績前年比
不動産開発投資総額8兆2,788億元▼17.2%
新規着工面積5億8,770万㎡▼20.4%
販売売上高(新築)8兆3,937億元▼12.6%
中古住宅価格(70都市平均)上昇都市ゼロ▼5〜6%
オフィスビル投資3,203億元▼22.8%(種別最大)
未販売在庫7億6,632万㎡+1.6%(増加)

出典:北京日本商会『中国経済と日本企業2026年白書』(国家統計局データに基づく)

政府の在庫買い取り策が継続されているにもかかわらず、未販売在庫は減少に転じていない。市場の需給緩みは解消されておらず、特にオフィスビルへの投資は▼22.8%と全種別で最大の落ち込みを記録した。

1-2 住宅・オフィス・商業施設——種別で全く異なる温度差

「中国の不動産が下がっている」という認識は正しいが、種別によって状況はまったく異なる。一括りに判断することは危険だ。

住 宅オフィス
価格下落幅(2020→2026年)市内10〜20%/郊外20〜30%賃料33〜42%/売買30〜50%
取引の動き実需は動いている賃貸・売買ともに停滞
底打ちの見通しエリアによっては可能性ありまだ先・見通せない
借主・買主の立場優位(選別は厳しい)圧倒的優位
投資目的の動きほぼ止まっている機能していない

住宅には「住みたい」という実需が下支えになるが、オフィスにはその安全網がない。企業業績の回復と拡張意欲が戻らない限り、オフィス需要の底上げは期待しにくい。

1-3 先行き予測 ── この状況はいつまで続くのか
住宅の先行き
  • 2026年3月時点で新築価格は前年比▼3.4%と33ヶ月連続下落
  • 上海のみ+3.7%と都市間格差が鮮明に
  • 実需の取引は動いており価格調整が一巡しつつある
  • 複数機関「本格回復は2027年以降」と予測
→ 底打ちは近い。値上がり期待には程遠い
オフィスの先行き
  • 需要回復の前提(企業業績・拡張意欲)が整っていない
  • 新規着工▼21.9%で将来の供給は減少へ
  • 賃料の底打ち・上昇までには相当の時間が必要
  • 立地・グレードによる二極化が進行する見通し
→ 借主優位は2028年以降まで継続の公算

「待てばもっと下がる」は必ずしも合理的ではない。契約更新のタイミングは自分では選べない。今、満期を迎える企業にとってこの市場環境は歴史的な好機だ。

CHAPTER 2 オフィス更新交渉の現実 ── チャンスと、見落とされがちなリスク
「更新」こそが最大のチャンス

契約満期を迎える更新のタイミングは、賃料交渉において最も交渉力が高まる局面だ。空室率が高止まりする今、オーナー側には「賃料を下げてでも既存テナントを繋ぎ止めたい」というインセンティブが強く働いている。

47%
スターツ中国が2025年に支援した更新案件で、最も削減率の高かった事例の賃料削減幅

これは運ではない。交渉の「準備」と「進め方」が結果を大きく左右した事例だ。

交渉成功の2つのポイント
タイミング:契約満期の6ヶ月前、できれば1年前から動く

満期直前では「どうせ更新する」と見透かされ、移転という選択肢も取れなくなる。早めに動くことで「移転も辞さない」という姿勢が交渉力に変わる。

進め方:市場データを根拠に、パッケージ交渉で最大化する

賃料の値下げだけでなく、フリーレント・原状回復条件・設備更新負担などをセットで交渉することで総合的なコスト削減効果を最大化できる。

「わかってはいるが、動けない」という現実

多くの担当者が「ちょっと交渉すれば数%は下がるから、まあいいか」という表面的な対応に留まっている。しかし現在の市場環境では、適切な準備と進め方によってそれをはるかに上回る削減余地が存在する。

COLUMN ── 知っておきたいリスク
オフィス交渉を社内だけで進める際のコンプライアンス上の留意点

オフィス賃貸借の交渉は、住宅あっせんとは規模感がまったく異なる。物件の規模次第で取引に関わる金額が大きくなり、貸主側・仲介業者・社内のローカルスタッフの間で、テナント企業が把握しないまま水面下でやり取りが行われるリスクが他の不動産取引より高い傾向にある。

中国ではオーナー側との交渉が中国語で行われることが多く、日本本社がプロセスの詳細を把握しにくい構造になっている。コスト面・コンプライアンス面の双方でリスクを内包するこうした状況を回避するうえでも、外部専門会社へのアウトソースは有効な選択肢となる。

CHAPTER 3 中国不動産の「手じまい」 ── 売却の難しさと成功事例
3-1 なぜ中国の不動産売却は難しいのか

中国事業の見直し・縮小フェーズへの移行に伴い、保有不動産の整理を検討する日系企業は増えている。しかし中国での不動産売却は、日本とは比較にならないほど複雑だ。

壁 ①
「適正価格」が分からない
日本のREINSに相当する統一データベースが存在せず、ポータルサイトの価格信頼性も低い。不動産鑑定には数百万円規模の費用がかかる。
壁 ②
税制・規制が不透明かつ変動する
地域や窓口次第で判断が異なり、昨日まで可能だったことが突然変わるケースも多い。北京と上海で対応が異なることも珍しくない。
壁 ③
売却資金の海外送金が困難
売却はできても資金を日本・香港本社へ戻せないという壁が存在する。特に資産管理法人名義の場合、現規制下では口座開設が認められないケースがある。
壁 ④
複数都市にまたがる案件の一貫管理
北京・上海・香港など複数拠点にまたがる資産整理では、それぞれのルール・市場環境・税制差異を横断的に把握・調整する体制が必要となる。
3-2 スターツの支援実績

スターツ中国では、中国事業の縮小・撤退フェーズにある日系企業の不動産売却を複数支援しています。「どこから手をつければいいかわからない」という段階から、売却完了・資金回収までを一貫して伴走するのがスターツのアプローチです。

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3-3 まず知っておきたい3つの壁

中国での不動産売却は、日本の常識が通じない場面が多い。特に以下の3点は、多くの企業が直面する壁だ。詳細な対処法・スキームについては、スターツへのご相談を通じて個別にご案内しています。

壁 ①
適正価格が分からない
日本のREINSに相当する統一DBが存在せず、市場価格の把握自体が難しい。
壁 ②
税制・規制が突然変わる
地域・窓口により対応が異なり、昨日まで可能だったことが変わることも。
壁 ③
売却しても資金が戻らない
売却資金の海外送金は別問題。法人形態によっては送金自体が困難になるケースがある。

「どこから手をつければいいかわからない」という段階からでもお気軽にご相談ください。まずは現状の整理からお手伝いします。

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おわりに

中国不動産市場の調整局面は、テナント・売主にとって歴史的な好機です。しかし、この機会を最大限に活かすには市場の全体像を正確に把握したうえで、契約満期や事業計画に合わせた早めの動き出しと適切な戦略が不可欠です。

オフィス更新も、中国資産の売却も、「なんとなく対応した」という結果を避けるために、ぜひ早い段階からのご相談をお勧めします。